†でおきしブログ†

ウナギ食べたいヽ(•̀ω•́ )ゝ✧

バーの隅の男

☆10年以上前の話だ

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そびえ立つ門をくぐると、すぐに街案内と思わしき女性に声をかけられた。
冒険に旅立つ事になって最初に訪れた街は、この辺りでは「首都」と呼ばれているとの事だ。

レンガと石畳で作られた暖色系多めの目に優しい町並みの中、商売人達が歩道を埋め尽くす勢いで露天を開いており、旅人がウィンドウショッピングを楽しんでいる。
街の周りは高い壁で囲まれており、どうやら外にはモンスターがいるようで随分物騒らしいのだが、内側は平和な雰囲気である。

露天で価値の分らない装備品に手を出すわけにもいかず、そもそも銭も無い僕はフラフラと観光気分で彷徨っていた。
宿屋や教会、図書館などを巡った先に小ぢんまりとした建物があった。

特に目立つような大きさではないのだけれど、その建物の扉は他とは異なる鈍く黒光りする金属製のものだった。
よくみると軒に「BAR」と掠れた文字が書かれた板がぶらさがっている。

仲間もいない僕は丁度良いと思い、重たい扉を開いて酒場に足を踏み入れた。
店内はBGMもかかっておらず薄暗く、まだ開店していないように思えた。


BARの店内

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???「誰かをお探しで?」
不意に声をかけられたので少し驚いたが、悟られぬように振り返った。

俺「や、やぁ。閉店しているかと思ったよ。貴方はここのオーナー?それとも店長かな?」
???「この店にはそんなのは居ないよ。永遠に実装されない酒場なのさ」
俺「では、ここではお酒を買って呑んだりできないの?」
???「そうだね。ごっこ遊びならできるけどねwwww」

『へんな笑い方をする人だな…』

俺「よくここにいるの?」
???「大抵はいるね」
俺「ここで何をしているの?」
???「ここで観察をしているのさ」
俺「観察って?」
???「フフフ…」

…そう言ったきり、彼は何も喋らなくなり「離席中(AFK)」という吹き出しが彼の頭の上に浮かび上がっている。
少し変わっていたが、面白そうな人のようだ。

今日はこのぐらいにしておこう。


> Shut down…
カリカリカリカリ

ブゥゥンン…
シュワワワ〜…

☆蛇足

その後、いろんな仲間達と酒場に溜まり各地を冒険したりと楽しかったのだけれど、皆いろんな理由で冒険を辞めていった。かくいう僕も割と早く足を洗った。

10年以上経過した今でも、あの酒場に彼はいるとかいないとか。
当時のMMOにはそういったプレイヤー同士のままごとプレイが熱かった。

最近のお膳立てされたお使いMMOには飽き飽きなのだ。
ワクワクするインフラさえあれば、プレイヤーが演じてくれる。
ブロードバンドやPC性能がどれだけ上がったとしても、実の所そういったワクワクする冒険のフィールド(インフラ)を提供するのはとても難しい事なのだろうと感じる。

また、どれだけ寂れたGAMEだとしてもずっと続けているプレイヤーには敬意を表しつつ、感動すら覚える。

以上、MMOへの思ひ出でした。